短歌

ピオーネ

ただの黒いかたまりだったピオーネが供されてより光沢帯びる

テレビ小説

録りためたテレビ小説見るように子育てをしてどこかで追いつく

ロケット

ロケットが飛んだ翌朝 盆踊りのやぐらひっそり解体される弟の眼鏡の弦が細いのはきっと僕への当てつけなのだ打刻したタイムカードを中空で二三度振ってラックに戻す

死ぬ前に

死ぬ前に食べたいものを言い合ってパピコと言って半分こする夏休み終わり間近の校庭の渡り廊下はとても厳粛おやすみとたったそれだけのことを言う相手もいない夜におやすみ

光さす

雨空のまま夜になり朝がきて光さすごと届くAmazon本日はお日柄もよくパンも焼けあたりに甘い匂いみちてる最期には死ぬことになるそれまではきっと生きてるそんな占い中学の部活が陸上だった子にボルトの走り解説される止まりますボタン押さずに「降ります!…

レモン33個分

まだ君と暮らしはじめる前にいたアパートの窓閉めてきたかな足元にまとわりつきしモンキチョウ君はお義母さんに似てくるね夏風邪に君のキス一粒レモン33個分の愛情

がんばるよ

悪夢でも君といられる夢ならばこのまま逃げずトドと闘う冷凍のサンマ解凍されし日で新サンマには見向きもしない青春の数は無限でそのうちのひとつを選び夢膨らます誕生日ケーキは安い苺のでいいから君の風邪をうつしてあいにくと井伏鱒二の小説を見るかのよ…

係留

物質となった私が幽体のわたしをしっかりつなぎとめてる

「短歌の目」8月みなさまの作品感想(その3)

その2より粛々とつづく……さて、「短歌の目」8月の感想もいよいよラスト、その3になります。やはり今回は僕自身が参加してないこともあってか、フェアじゃないなあ、という気持ちをどこかで若干感じつつ、どなたからもいまのところクレームが来てないのをいい…

夕暮れの夏

そばかすの少女のような梨ひとつしのばせ帰る夕暮れの夏宿題のリコーダー吹く音階で顔のうつむき加減が変わる忘れたての記憶ほど奥ゆかしい合併号のジャンプ買う遠慮の塊みたいな夏だけが最後に残って手が出せないどうせ夏の終わりは抜け殻になる蝉の抜け殻…

「短歌の目」8月みなさまの作品感想(その2)

その1より淡々とつづく) その1にも、2にもその3にも共通することですが、みなさまの歌を転載するにあたって、ルビや全角半角の空きにはいちおう注意を払っているつもりですが、すでに注意が足りなかった部分も見つかっています。その分は申し訳ないですがこ…

ラブレター

ラブレターという言葉は死語になり製氷皿は真夜中に鳴る

「短歌の目」8月みなさまの作品感想(その1)

今回は残念ですが僕自身は「短歌の目」8月に参加できませんでした。でもみなさまの歌は洩らさず読み、いつものようにそれぞれ10首のなかからいちばん好きな歌を1首だけ選び、ごく簡単な感想というか好きな理由をメモしていました。それを毎回長くなって自分…

雨音は風呂場の高い天井にひびき瀧のように落ちてくる恨みごとひとつ言わずに大根煮る鍋には小さすぎる落し蓋古書店で偶然見つけし古本もはじめて読めばそれも新刊

夜のパンダ

夢でしか逢えない人に逢えなくて夜のパンダも笹を食(は)んでる寅さんの映画のような夢オチでいいから君に愛を告げたい蛇口から出る水になる夢を見た昏く愚かな旅をしてきた目が醒めるまでが夢なら僕はまだ帰りのバスから降りてもいない現実が夢のなかまで…

終戦記念日

百日紅ダレモカレモが物言わず元いた場所へ帰って行けり 夜も更けて麻雀牌をかきまぜる音こだまする終戦記念日

白桃

白桃のうぶ毛ひいやり撫でさする死んでる人も生きてる人も

流星

流星の降る夜ラジオのDJが僕の好きな歌をかけてくれた

錠剤

錠剤がまたひとつだけ加わって終わりの夏はそっと忍び寄る夕立がびしょ濡れにした夕刊をドライヤーで乾かして読む夕空は薄茜色に焼けパンはミルクチョコレート色に膨れた

残り火

打ち水のバケツの水に手を入れてジュッと花火の残り火の音

祭りのあと

賑やかな祭りのあとを縫うように朝刊配達ジグザグ走る

夏の日の思い出

終いまできれいに蝉が鳴くもので「どこかへ行くの?」と尋ねました

立秋

さようなら夏の友だち空蝉は空飛ぶ夢を見ているだろうか

ショートケーキ

ショートケーキからこぼれた苺みたいに立てかけてある裸の義足

原爆忌

猛暑日やヘリは頭上を旋回し聴いたことない鳥の声聴く

嘘じゃない

音のない花火をしばらく見てごらん涙が出るよ嘘じゃないから

暑中見舞い

かき氷こぼして溶けた青春の残滓を指でなぞってみたり

山羊の歌

貨物車の引き込み線の空き地には弐頭の山羊が繋がれていた

つづく

錆色の熱帯夜白白と明け途切れなくつづく映画の齣

上がり框

冬の日に棺の出でし玄関の上がり框を蟻の列行く