短歌

祭りのあと

賑やかな祭りのあとを縫うように朝刊配達ジグザグ走る

夏の日の思い出

終いまできれいに蝉が鳴くもので「どこかへ行くの?」と尋ねました

立秋

さようなら夏の友だち空蝉は空飛ぶ夢を見ているだろうか

ショートケーキ

ショートケーキからこぼれた苺みたいに立てかけてある裸の義足

原爆忌

猛暑日やヘリは頭上を旋回し聴いたことない鳥の声聴く

嘘じゃない

音のない花火をしばらく見てごらん涙が出るよ嘘じゃないから

暑中見舞い

かき氷こぼして溶けた青春の残滓を指でなぞってみたり

山羊の歌

貨物車の引き込み線の空き地には弐頭の山羊が繋がれていた

つづく

錆色の熱帯夜白白と明け途切れなくつづく映画の齣

上がり框

冬の日に棺の出でし玄関の上がり框を蟻の列行く

場所

仕切り棚外し西瓜を丸のまんま冷やしておった場所が明るい

空なんてあるだけマシさ感情の発露に最後フタしてくれる

星月夜(ほしづくよ)

怪物が近づいてくるかそけき音に怯えながら過ごす星月夜デラウェアまとめて口に頬張って赤紫のべろで嘘つく雨上りのヘッドライトに照らされしガラスカレット光る舗装路

銅版色の町

そのような映画があった気もするが思い出せない 茗荷を齧る夕映えに包まれし町ピカピカの銅版色に乱反射せり助手席が君でなければバックするときの景色が違って見える

夕立のあと

炎天を歩く女の汗ばんだ乳房のようなゴーヤチャンプルーこんなにも大きな夕日が沈もうとしているときになんと無力な儚さをいうには存外しぶとくてパチパチはぜる線香花火図書館のなかまで聞こゆ蝉の声ページくる音かきけ消されたり背高のもろこし畑に来てみ…

適正分量がわからない

ジーンズを洗って干すとき手の平で挟んで叩き 空晴れわたる二十年飼っても亀の餌やりの適正分量がわからない夏盛りなれど桜は生い茂り秋冬そして次の春待つ自転車の子ども乗せから幼子のズボンのポケット蝉のひと鳴きここがほら蝉がよく鳴くとこだよと手を引…

材木屋の前の

夕方の明るい空にまぎれしは雲の切れ端はのような三日月浴槽を洗おうと窓開けてつとツクツクボウシの早鳴きの声冷蔵庫のチルド室にはスーパーの白焼き一尾眠る大暑で雨の日の匂い立つよな材木屋の前で信号変わるのを待つカステラの端のところが旨いからそこ…

夏土用

戦争がやつてくる音どんなだろ ずかずかどかどかそろーりつるん前歯しかない老人と前歯の欠けし子が並び 西瓜を食らう幽霊がいる気配して振り向けば ささくれだった小指の疼きルーティンワークのように卵割る孵らぬ命を埒外におき梅雨明けてから降る雨はなぜ…

無題理(むだいおさむ)

寝苦しい夜でしたねと女子アナがいうのはぜんぶウソだと思った猛暑日にゆうべの残りのみそ汁の冷やしたやつをワシとかっこむなにかあるというわけでもないけれど冷蔵庫の前に立つてゐる朝刊のスポーツ欄の片隅でわが母校の夏はや終わりぬ暑くって死にそうな…

朝顔

悲しくて泣く蝉のその悲しみをわかってあげられなくてごめん梅雨明けを告ぐるニュースのすぐあとではじまるラジオ体操第一お祭りに行きませんかはつきあってくださいと言うに等しい言葉英国のジャックの豆の木のように巨木に育てと朝顔にいふ買うつもりにな…

その海は夜中こっそり残飯を捨ててた海とつながっているカスピ海ヨーグルトにはカスピ海あまり関係ないかもしれない海岸の夜のテントは波音とランタンの灯と潮の香りと坂道の上と下では鳴いている蝉の塩分濃度がちがう九十九折り自転車のペダル廻るまま下り…

通りぬけできません

裏木戸をぬけたところで夕立につかまりしまま軒先をかる夕立の匂いのあとの駅前のコロッケの匂いに包まるる遠花火とどかぬ想いにことよせて「どこかしらね?」とつぶやいてみる雨はもう止んだかしらと窓開ける夜闇(よやみ)にまぎれし祭囃子の

エマニエル夫人

雨だから窓開けられない雨だけど窓少し開け雨の音聴く夕立がぼくのメガネの内側を濡らしてるまにさよならをいう一房のまだモスグリーンのバナナ買い神楽坂のぼりゆくパリー祭こんこんと眠り目覚めし真夜中に置いてけぼりをくらったようなエマニエル夫人が坐…

帳消しにしたい過去

ありがちな写真だなんて笑うけど その空と雲おまえに見えたか帳消しにできぬ過去あり 百日紅の白い花あおぞら薄めけり口パクで話しかけたらおもむろに髪かき分けてイヤホン外すグラスより滴る結露テーブルに溜まりそれさえ乾いてしまうデモ隊の最後尾にて深…

ゲーテ詩集

夕暮れの駐輪場に忘れしはカバーのとれたゲーテの詩集台風がくるらし 指でたわいなく西瓜の種をかきだしている炎天を闊歩する女四本の肉片はちきれんばかりなり太陽の光通さぬ雨雲がクリームパンの大きさだった

バッターサークル

からだじゅう汗滴らせ職人は空き地に黒いシート張りけり少年の真夏の影は短くてバッターサークルのなかにおさまる教室のきみまでの距離遠すぎる冥王星にたどりつくより

迎え火

初蝉は人がきたなら鳴きやんで通りすぎるとまた鳴きだせり猛暑日の一日を終え汗ばんだからだ横たえ靴紐のごと丸ごとのスイカ回転させながら半分に切る切り口のずれ迎え火をいつも焚いてた人をこそ迎える習わし途絶えさせたりこの空の続く町にはきみが住みき…

「短歌の目」みなさまの作品感想(7月)

今回も、第5回「短歌の目」7月に参加されたみなさんの、それぞれ題詠十首のなかから、僕がもっとも好きなお気に入りの一首、どうしても気になる一首、というのを選んでみました。全員分あります。前回やった好きな短歌10選というのは個人的な気持ちの変化で…

袋がけ

一日で布団何枚干されしや梅雨の晴れ間の日本列島農園のぶどう夕べは雨に濡れ今日から真白き袋かぶさる浴衣着た子らも混じって今日はまだ盆踊りの練習会です口笛を吹いてる妻のすぐ横で夫は裸足で本を読んでるアイスティーに黙っていてもついてくるシロップ…

silence

沈黙に気づまりをして空っぽのカップなんども口まで運ぶ砂抜きのあさりはどこのなんという海の干潟の砂にまみれて足元に転がってきたゴムボール拾うよりさき礼を言われるほんとうは学校どうだとききたくて浦和レッズの調子たずねる梅雨明けたような青空いっ…

街灯の夜

協会に認定されない記念日をきみとふたりで過ごす記念日失恋のたびに変えてるパスワード傷心えぐるオートコンプリートはじめてのキスもこんな夜のこんな街灯の下だったという夜ググってもググっても出てこないぼくの感情はネットには置いてない二時間の映画…

永遠

どうしても忘れられない人がいて ときどき夢のなかで逢ってる古(いにしえ)の哲学者のごとマイマイは雨に濡れつつ手すり這いけり永遠は未来永劫興(おこ)ることならず苔むしていくことなり

舗道のこっち側

プールバック振り回し駆けてゆく少年に影が追いつかないことりともしない閉架書庫を漂うシーラカンスのような気分の雨の日まだ夏が来ないうちから冬のこと心配してる兎のようになんにちも月を見ないといいながら門扉の施錠たしかめてくるあなたとは出逢いた…

拾えども拾えども

朝顔と鬼灯と夏を特売で売ってるスーパー 迎えに来て「ごはんなに?」と愛をささやくようにいいスマホアプリを起動するきみ拾えども拾えどもオレンジの朝ノウゼンカズラ拾い集める置き傘を必要とせぬ生活を始めて何年経つただろうか子らのかく短冊のぞくあの…

サ・ラ・ダ・記・念・日

澤という一輪のなでしこの花そのダイナモは動きやまない乱雑な本の山から「富士日記」夏がくるたび探し出してる騙されたふりしてくれるやさしさに気づかぬふりをしているのです切手貼り手紙を出すということもいつしか故事のひとつなるや年頭の誓い半ばで挫…

緑児

緑児の手のひらのごと形してムラサキシキブの花のつぼみ目覚めればはじめに聴きし雨音のリズムできょうの装い選ぶ野菜室彩るためのパプリカは賑やかしなのわたしとおなじ学校の裏庭に咲くどくだみは百葉箱を埋めてしまいぬ濡れた傘の置き処なく幾駅も床に広…

個人的意見ですが

ぼくらしさカマキリらしさ夏らしさ自販機らしさ 納豆混ぜるざんざぶりの雨が上がったことなども鳥の囀り聴いてより知る街灯は等間隔に灯りみな月からも等間隔にあり夕刊を取り出したあと空っぽのポストのなかに夕日が入るドライブの途中で海が広がったみたい…

第5回「短歌の目」7月/夏の夜

2回めの参加です。今回も題詠には苦戦しました。誰ですかアンタレスなんていうお題を出したのは!(笑) あと東京の練馬区に「ぬばたま」という美容室があることがグーグル検索の結果わかりましたよ。それと全体的には夏の季語っぽいお題が揃ったなかで、「…

別れ話

ボサノヴァが低く流れるカフェテリア別れ話を切り出せずいるブランコも滑り台さえなくなった児童公園ひまわりは咲くポケットに映画の半券入れたまま丸洗いしたマット・デイモン柿の葉をつたう雨だれぽおたりとサッシのなかのカップに落ちる端正な顔立ちをし…

humor

一度めの採血失敗したくせに肩の力を抜くのはそっちタペストリー仕様の百年カレンダーぼくが死ぬ日もこのなかにあるドーナツの穴のことばかり言い募り小麦と卵の立つ瀬がないキーマカレーとキーナ・ナイトレイは似ていると得意気にいう文月うるう見晴らしの…

飛び石

春すぎて夏が来たのに湯たんぽのしまい処を思い出せないかつてこの井戸にすいかが冷えていたことさえ封じる蓋の重石よ飛び石を伝った先は暗がりで どこへも辿りつかぬ暗がり病院はチューブわさびの匂いだと誰に言ってもわかってくれない診察の予約漏れてゐし…

捨てちまおうか

日曜の午後四時半の図書館の ひといきれと草の匂いして「紫陽花もおしまいだね」なあんていふ あなたを捨てちまおうかと思ふ十五時間たてば再び会う人にさよならといい混沌とする引っ越しの車待たせてラムネ瓶 最後飲みほし虚空に放る下足札鳴らし裸になるく…

梅雨空

ドリップの残り余さずうつしかえ朝いちばんの珈琲淹れる家中のこうもり傘をなべて干す四人家族で五本と半分チョコレートひとくち齧り子が開く勘定科目ハンドブック梅雨空を切り裂くものはなにもなく ただ蒼々と樹木繁れりさっきから金魚屋きんぎょ売らずして…

硝子の破片

水のないプール一日かぎりにて少年少女の夏のあとさき濡れそぼつ葉陰に張ったくもの網(くものい)の硝子の破片のように光る午睡にはちょうどいい雨 はじめて桃を食べた日のこと思い出してる夢をみた したしきものの みながみな 死んだことなどわすれ生きて…

ガード下

明日にはまた逢えるのに離れても離れがたきを夕べの改札夏蝶に見とれブレーキ軋ませて路面電車はカーブ曲がれり蚊遣火のローズアロマと香り変え人より虫を楽しませをり昼間でもなお薄暗きガード下 緑の灯りほのかに照らすかかとのした緑の町広がりて小高い丘…

やらかく灯す

五月雨や町の本屋の平台の文庫の表紙みなめくれをりくたびれて甘味処の氷旗見え歩道橋わたらんとするマイバックどすんと置けば金棒のごときゴーヤのごろりと落ちる遅延した電車踏切り過ぎるとき誰かの安否ちらりとよぎる病棟の奥の暗さを見ぬようにして採血…

使われなくなったもの

パレードの先頭が見え一塊のあぶくとなりて沸き立つ舗道フライパンは裏側から焦げていくと君はいえり裏側も見ず蝉はもうこっそり土の中にいて地球征服のときを待ってるしばらくはトタン屋根打つ雨の音 聴いてそれからシャワーを止める使われなくなつたものが…

「短歌倶楽部」(はてなグループ)へのお誘いです

表題どおり「短歌倶楽部」というはてなグループを作りました。主な活動は、自分の短歌を作ることです(まあそうですよね)。範囲を俳句や詩や掌編小説くらいまでに広げてもいいのですが、目下僕の興味の対象が短歌にあるので、とりあえず短歌倶楽部です。も…

サボテンの棘

地味だからせめて鉢だけ赤にしてサボテンの棘あなたを待てり雨降りの前の晩には君のこと想って脚の疼きやまないあなたの忙しいを燃やしその灰をキャベツ畑の肥料にぞせむ梅の木の二股で猫くつろいで君去りしそして夏がまた来る

十八時過ぎの夕日

父となるかもしれないしならないかもしれない子と過ごす父の日少年は唇湿らせ嘘をつくくらきこころを見透かされぬよう瞑目して暗渠の上を歩くときわれも一滴のいにしえとなる夏至の日のブレッドナイフあぶりつつ 父の棺に釘打ちつける十八時過ぎの夕日に畳ま…