「短歌の目」みなさまの作品感想

f:id:karigari:20150615105215j:plain

 

前エントリでは、「短歌の目」という企画に参加した全26人(僕を除く)の中から、僕が好きな短歌10選というのをやりました。

 

kanaitsugeru.hatenablog.com

 

今回は、そこには数の都合でどうしても選べなかった作者の、それぞれ題詠10首の中から、もっとも僕が好きな1首というのを選んでみましたので、どうか前エントリと併せてご覧ください。

なお、重ねて申し上げておきますが、僕自身は短歌をはじめて半月ちょっとのヒヨッコ中のヒヨッコですので、作品の優劣とか出来云々というのは考慮に入れず、というか全然意味がないので、単純に僕が好きで面白いなあと思ったものを選んでいます。他の方がやればまったく別のものができることでしょう。

それと、もしかしたら、いえおそらく、それぞれ作者の方が一番自信をもって作った歌とは違う、なんとなく出来ちゃったんだよねー、という軽いノリの歌を僕が選んでいる可能性はそうとう高いと思います。

しかも、トンチンカンな解釈をしているに違いありません。みなさんのこと、背景とかふだんどんなブログを書く方なのか、短歌歴はどの程度なのか、どなたもまだ存じ上げないので、あとから自分でこれ読んだらきっと冷や汗が出てしまうかもしれませんが、まあそれはそれで……。

 

tankanome.hateblo.jp

 

以下、「短歌の目」6月題詠、掲載順で――。

 

 

熟れながら背を丸めつつ梅の実が信条のごとく種を抱いて (id:ankoro

熟れる様子を「背中丸める」、「信条のごとく種を抱く」と喩えているところがすごくいいなあと思います。とくに「信条のごとく」というのは僕だったら絶対思いつかない表現です。でも言われてみるとそんなふうに見える。

 

「青と赤、どっちの紫陽花が好きなの?」「わたしは白い紫陽花でいたい」(id:negi_a) 

どっちが好きかと問われているのに、「白でいたい」という作者の返答がユニークで、少し苛立つ気持ちや、あるいは決意のようなものが感じられて好きです。きっと「白」にも大切な意味があるのでしょうね。

 

梅の木を桜とはしゃぐ子供らは教科書にて春を習う (id:zeromoon0

なんといっても「教科書で春を習う」という下七七がステキです。これに尽きる気がします。で、梅と桜に限らずいろいろなことにも言えそう。いまだと、むしろインターネットでそういうことも覚えてしまうこともありそうです。

 

もう少し甘くないのが好みなの グラス傾け青梅齧る (id:ryo71724

まったく根拠のない解釈ですが、子どもっぽい扱いに少し物足りなさを感じて背伸びしたがっている(関係を一歩先に進めたがっている)女性の心理がよく出ているなあと思いました。トンチンカンだったら恥ずかしいです。というかごめんなさい。

 

あく抜きに苦戦し続けやっと炊く筍ご飯で母の苦を知る (id:tenpurusan

とっても素朴な歌だなと思いました。筍のアク抜きは大変ですよね。なんでも自分でやるようになってはじめて親のありがたさを知るってこと僕にもたくさんあります。そして、うちの子どもたちにも読ませたい歌。

 

袖がないあの人さいきん見ないけどワイルドだからきっと平気ね (id:okappasan

面白い! 本来は歌の補足説明が必要なのかもしれませんし、時代がもっと過ぎればなんのことかさっぱりわからない歌なのですが、まあそいうことは置いといても、とにかく発想が面白いです。そうとうくだらないけど(シツレイ)。でも最近またときどきテレビで見ますよ、ワイルドの人。

 

たらちねの母なんて知るかスーパーで特価のすいかを一玉買って (id:chmi_bluebird

「母なんて知るか」が今回の枕詞に対する皮肉なのか、それとも実際のお母さんに対する反発なのか、そのへんが読んでいてニヤリとするところで、それはそれとして、特価のすいか一玉ですからねー。ここは絶対すいかでなくちゃダメですよね。譲れない。苺とかメロンでもダメ。しかも丸ごと一玉。

 

袖をひくくらいじゃ何も伝わらない私はいつも背中蹴飛ばし (id:kimaya

確かに、こういう苛立ちはあります。というか僕は背中蹴飛ばされる方ですが。恋人に対して伝えたい大事な気持ちがこんなに溢れそうなのに、という作者のじれったい気持ちがよく出ていると思います。蹴りたい背中

 

出会うたび色合い変える紫陽花はどんより梅雨に彩り添える (id:platypus0114

同じ紫陽花がだんだん色の濃さを増してくるのか、あるいは同じ紫陽花ではなくて、この時期はあちこちに紫陽花咲いてますかrら、別の紫陽花なのかもしれないけれど、それにしたって、まさに鬱陶しい梅雨空に彩を添えてくれる紫陽花はいいものです。

 

私だけ傘持ってると気まずくて準備のよさを呪いたくなる (id:hirinzu

このニッチな感情表現に「あっ」と驚きました。でも言われて気づく確かにこういう自分の用意周到さを呪いたくなるときってありますねえ。見つけるのうまいなあ。それと同時に目に見えない同調圧力の怖さみたいなものも僕は感じました。

 

空になると誓ってあの色あの高み目指そうとする筍のばか (id:nigaichocolate

筍、というか竹がそういうふううにすくすく天に向かって伸びていて、つまりあれは空の青さや高さに少しでも追いつこう、あんなふうになりたいという気持ちだった。そしてそれって、この筍はきっとカレシのことで、そんなにがんばらなくてもいいのに「バカ」という、なんともいえない可愛らしよ。

 

忙しそう今年は会うことままならず誕生日すら文字がプレゼント (id:yoritomo2

これ、目のつけどころがうまいです。短歌としては最後のリズムが少し字余りですが、きっとスマホメールとかラインで「誕生日おめでとう」と。それはそれでうれしいんだけど、やっぱりちょっと物足りないし寂しい、プレゼントがほしいわけではないが「会いたいなあ」という気持ちがひしひしと伝わってくる。

 

一年分溜めた憂いを飲み干して梅酒の瓶に実だけが沈む (id:sociologicls

梅酒そのものは最後の一杯を飲んでしまって、一年間溜めこんだ憂いもそれと一緒に飲み干したつもり。その証拠に抜け殻のような梅の実が瓶の底に沈んでいる。これ全部一年分の憂いだったのかと作者は感慨に耽っている。なんかリアルなサマが浮かびます。そしてまた新たな一年。梅酒作り(買ったものか)で一年の区切りを感じているのが面白いです。

 

筍のえぐ味が好きという僕に「だから私?」と聞く意地悪さ (id:xacoux

面白いなあ、こういう発想は大好きです。意地悪だけども、それ以上に可愛らしいですよね、彼女。奥さんかなあ。もしこれ実話だとしたら、どうぞ恋人(奥さん)を大切にしてあげてください。貴重ですよ。恋人(奥さん)に★5つ。

 

あなたがいない日ばっかり雨だからこっそり使う黒の置き傘 (id:Qingum

この置き傘ってね、社内恋愛とかでふたり一緒に入れる恋人同士共通の黒い大きめの置き傘のことで、それをひとりで使うという意味なのか、それとも今日はカレシがいないから、可愛らしい傘じゃなくて実用的な黒い大きめの傘でいいや、と思ってる歌なのか、ずいぶん悩みました(1時間くらい)。どっちにしても「いない日ばっかり雨」の目のつけどころがユニークですね。

 

曲がり角ちらつくからさやめてよねときおり見せる不安げな顔 (id:popoon

 ドライブ中の歌でしょうか。そうではなくてもこいう経験は誰しもあるでしょうね。笑っていてもふと目に入るあなたの不安げな顔。あなたを不安にさせているその理由を私には教えてくれないの? というもどかしさや寂しさも同時に感じますよねー。好きです。

 

触れた袖 縁始まるか始めるか 自分次第を運命と呼ぶ (id:ryokuchai

 「袖振り合うも他生の縁」というくらいだから、ふつうはそれを運命といって他生(つまり前世)から決まっていることで、決して自分次第を運命とは呼ばないですね。だけど作者はそれを承知の上で、あえて、「始まるか」ではなく「始めるか」の方を選択しようとしてそれこそが「運命なんだ」と言い切る。その潔さがすごくステキだと思いました。

 

 

 

*****

以上です。きっと作者にすれば、そんな気持ちで作ったんじゃねーよ、と呆れたり笑ったり(もしかしたら怒ったり)するところ満載でしょうが、まあ僕の勝手な解釈で好きだと言ってるだけですから、どうぞ大らかな気持ちで許してやってください。もちろん苦情はいつでも受け付けます。

漏れや重複がないよう細心の注意をしたつもりですが、もし「私のがない」という方などいらっしゃったら、どうぞ遠慮なくコメント欄にお願いします。それかツイッターのアカウントの方でもいいですよー。