「短歌の目」8月みなさまの作品感想(その3)

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その2より粛々とつづく……

さて、「短歌の目」8月の感想もいよいよラスト、その3になります。やはり今回は僕自身が参加してないこともあってか、フェアじゃないなあ、という気持ちをどこかで若干感じつつ、どなたからもいまのところクレームが来てないのをいいことに、調子にのって最後までやってしまいますね。あいかわらずの「不快かもしれない」感想コメントを笑ってお許しください。


なお、掲載洩れ等あれば本人でも気づいた方でも遠慮なく言ってください。「短歌の目8月投稿分」にリンクされている記事には、洩れなく感想コメントをつけているつもりですから。あと全員分終わったあとに、まとめを少し書きます。全体的な感想と、いま僕が短歌について考えていることなどをつらつらと(ダラダラと)書く予定です。よければそこも飛ばさず最後まで読んでくれるとうれしいです。

感想の感想や、誹謗中傷(僕が完全に凹んでしまわない程度でお願いします)もどしどしお寄せください。

 

tankanome.hateblo.jp

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緋綸子の雑記帳

かくれんぼ 見つからなかったともだちを僕以外誰も覚えてなくて

 なにひとつ「おどろおどろしい」こと言ってないのに、まるで世間話のように怪談短歌になってますよね。子ども世界ではままありそうで、大人になったら人はそんなこと忘れている。くちづけの歌も面白かったです。

 

歌うおかあさん

半襟に咲きこぼれてる乱菊が箪笥の奥で眠り続ける

 この歌、非常に地味ですけどステキですよ。乱菊は家紋でしょうか。そうじゃなくてもそういう柄の半衿が、いまは出番なくひっそりと箪笥の奥にしまわれている。端正な歌だなあと感心しました。

 

意味をあたえる

ブランキーに、「くちづけ」っていう曲がある。
ドラムがすごい
ドラムがすごい。

 BLANKEY JET CITYのドラマーの彼の歌ですね(名曲!)。で、問題はこれを短歌といっていいのか正直僕にはわからないのですが、ともかく(形式上)下の句七七の反復のリズムが妙に頭に残って、つい何度も口ずさんでしまいます。

 

たまには文章を書かせてください

「幸せになれる麻酔の被験者になっていただき感謝申しあ

 このアイデア面白―い。麻酔が最後効いてるんだ! 会話のカギ括弧も開く分しかなく、しかもね、字数を数えたら本当に「あ」でちょうど結句は七文字になってるし。いろいろと考えるもんだなあ、と思って。

 

Wakuraba

ひと夏の恋で傷ついたりしない 日焼けの痕の痛みほどしか

 上手いですよね。たぶんどこにも欠点らしきものが見当たらない。「ひと夏の失恋も日焼け痕の痛みほどしかないんだよ」という強がりとも、決意ともとれる、あるいはさらりとした感情が素直に表出しているなあと思います。

 

きまやのきまま屋

うるさくて蝉声の中 立ち尽くす 違う種類の大衆の孤独

これわかる! 確かに違う種類の大衆の孤独だわ。大衆というところがいいですね。蝉の大衆。で一歩引いて考えると、日頃から作者は(人間の)大衆の中にいて孤独感を感じているのだということが「違う種類の」でよくわかりますよね。

 

 泡沫サティスファクション

日焼けした顔じゃないからわからないことにしておくあの日の夕暮れ

雰囲気のある歌。遠い夏の日の忘れられない思い出があるんでしょうね。その彼を見かけたのに向うは気づいてくれない。というところに物語性を感じます。この女の人も強がってるんでしょうねえ。「あの日」がちょっと惜しいのかなあ……(スイマセン)。

 

 ライティング・ハイ

自転車を並んで押して歩いてく二人のためにまつりの夜はある

またまた「自転車を押して並んで歩く系」の歌に僕は弱い。そうですよ、そういう二人のためだけにまつりの夜はあるんです。それは全国世界中どこでも。こういう断定は気持ちいいですね。

 

 Qの箱庭

君と来た道を一人で帰るとき 世界はいつもくきやかになる

実はコメント欄のやりとりで、これ一回転して、つまりふだん一人で帰る道を、たまに恋人と二人で帰ると世界がちがって見えるけれど、それを経験した上であらためてもう一度一人で帰る道は……、という歌なんだということが既に僕にはわかっています。目のつけどころはとってもよくて(面白い!)、どうにか言葉を整理出来たらいいなあと。スミマセンここだけ感想コメント長くなって。それに僕にはどうやればいいのかわかりもしないくせに一端なこと言って、ホント申し訳ない。

 

 有限な時間の果てに

風鈴の 音に誘われ 路地裏に こんな建物 はじめて見たぞ

「音に誘われて路地裏に迷い込んだらはじめて見る屋敷があった系」の歌です、このパターンも僕は好き。ジブリ系? よくあるパターンと言えばそうだけど、それが悪いっていう法律はないんだからどんどん作ればいいと思いますよ。ワクワクするよね。

 

 nerumae(管理人さん枠)

菊ほぐしお浸しでむみちのくの婆の背中がどんどん曲がる

 トリは「短歌の目」管理人さんの歌です。一物仕立てとも二物衝突とも解釈できそうな歌で、面白いですね。菊をほぐしたお浸しを食べているお婆さんの背中が曲がっていくと言ってるのか、それとも上の句と下の句はまったくべつのことで、要するに取り合わせの妙を楽しんでいるのか。そのあたりは作者でないと本当のところはわからないかもしれません。もし取り合わせだとしても、とっても上手い(と僕は思います)下の句の選択だと思いました。

 

 ――以上です。

 

まとめ・のようなもの 

「ジャワ」のようにイメージが狭い範囲で固定される題詠は、みなさん総じてあまりうまくいってない印象です。「誰だよこんなお題出したの!」と提出者を糾弾してもいいレベルですよ。それと「冥」も全体的に窮屈そうでした。「怪談短歌」も難しかったですね。

その一方で案外「くきやか」などは、言葉自体はほとんど日常で使わない言葉ですが、「鮮やか」という言葉で代用して考え易かったのかなあと。それと問題の「くちづけ」ですが、みなさん共通に、なぜか思い入れが強すぎるせいか、残念ながらステキな歌がやや少なかったように感じました。(笑)

もし、ご自分の創作意図とまったく僕の感想が的外れだったとしても、どうかご自分の作品が僕や他の人に正しく伝わらなかったのかなあと、がっかりはしないでくださいね。僕だってまだ歌を作るのが楽しい、少しでも歌が上手くなりたいと思っているほとんどのみなさんと同じ段階にいるんですから。本来他人の作った歌をどうこう言えるはずもないのです。そして僕よりうんとレベルが上級の方は、これはもう僕の方の理解力が足りないのだとそう思ってくれて間違いないです。

さて、いまのところ僕は自分では、短歌の基本である五七五七七のリズムに可能な限り忠実に歌を作ろうと考えています。そのためにリズムからあぶれる言葉があれば、他の言葉で代用できるものがないかと探します。そしてどうしても見つからなかった場合にかぎり、字余りや字足らずもしょうがないかなあと考えるようにしています(といいつつ、図らずもそうなってしまう歌はけっこう多いのですが)。

たとえば穂村弘さんや東直子さん桝野浩一さんらの現代短歌の華々しい方々の、かっこいい破調の歌にはもちろん憧れますが、最初はやはり基本からです。出来るだけ平易な言葉で、中身についてもなるべく身近なところのスケッチからはじめていこうと思っているんです。まずは観察したままを歌のリズムにのせる。結果「そのままじゃん」というような歌がたくさんできてきますが、そんなの気にしません(少しはしますが)。

すべてはそこから。僕に天才的な能力やセンスがあるならともかく、どうやらそうではないようなので、いたずらにかっこつけて崩したり、あまり個性を意識し過ぎないように気をつけています。もし少しでも短歌のセンスがあるなら、いずれどうしようもなく滲み出てくるものがあるだろうし。なーんてことも、まあ期待はしてませんけどね。


と、いうのはあくまでも僕の考えです。他の人にはもちろん他の人の考えがあるでしょうから、僕がとやかく言うことではない。みなさんはそれぞれ自分のやり方で、短歌と向き合ってください。あるいは向き合わないでください。もしくは背中合わせでくっついてください。適当な距離を置いてつきあってください。

前々回より、この「短歌の目」に参加し、同時に参加した過去2回ともみなさまの歌のひとこと感想コメント、という名の雑談コメントを書いてきました。あとからそれぞれの自作品の解説などをゆっくり拝見するにつけ、僕の解釈は作者の意図とは似ても似つかぬトンチンカンなものだったなあ、と思い知ることもたくさんありました。


で、僕はどこを読み間違えたのか、どういうふうに勘違いしたのか、作者の想いの何を汲み取れなかったのか、と考えながらもう一度歌を読み直し、反省したり、「いやいやこれは僕の方がむしろ正しいぞ(スミマセン)」などとひそかに思ったりしているのです。そうしてそれもこれもすべて、歌を作る上での勉強なんだと思っています。

みんなのためになるから、誰かのために僕は毎回こうやって感想を書いているわけではなく、ほぼ100パーセント自分のためにやっています。自分のためというか、自分が楽しいからです。歌を作ることがもちろんいちばん楽しいのですが、他人の作った歌を読むことも(プロアマ問わず)楽しくてしょうがない。勉強と称してますが、誰かに強要された勉強ではなく、上の学校へ行くための勉強でもなく、何かの資格を取得するための勉強でもなく、ただ楽しむための勉強です。

本を読んだり映画を見たり美術館に足を運んだりするのと同じように、歌を作り歌を読みたいのです。


「短歌倶楽部」というグループをただの言いだしっぺで作りましたが、それに参加不参加は別として、ひとりでも多くの方が短歌を通して、楽しさや上達方法や参考となる本のことや感銘を受けた作品についてや、どんな短歌が好きかどんな短歌を自分は作りたいのか、そういう話題を共有することができたらなあ、と願っています。

そういう情報やご意見、雑談などあれば、「短歌倶楽部」の掲示板に遠慮なく書きこむか、もしくはみなさんのブログ等さまざまな形で発信してください。できるだけキャッチします。意見交換をしましょうよ。というかいろいろ教えてください。

ずいぶん無駄話が長くなりました。おしまいに僕の大好きな、そして目標とする歌を二首、あげておきます。いずれも作者は既に亡くなってしまいましたが、杉崎恒夫さんという歌人です。『パン屋のパンセ』より。

 

降りいでし四月の雨は理髪屋の鏡のなかまで濡らしてしまう 

 

バゲットの長いふくろに描かれしエッフェル塔を真っ直ぐに抱く

  

パン屋のパンセ―歌集 (かばんBOOKS)

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